「いかにして自閉症の人を社会の一員にするか」「いかにして我々は、自閉症の人たちと共存するか」
自閉症者の犯罪を防ぐための提言 刑事告訴した立場から
自閉症者の犯罪を防ぐための提言 刑事告訴した立場から
自閉症者の犯罪を防ぐための提言 刑事告訴した立場から /著 浅見淳子
自閉症者から10年にわたる法被害を受けた著者が、犯罪の実態を考察し、自閉症者の犯罪をどう防ぐか?を提言。
本がオススメの人!
- 自閉っ子の行動に悩まされている親、支援者
- 触法行為の自閉症者を支援している人
本を読むときの注意点
例えば、あなたやあなたの家族が自閉症者から法被害に遭ったとしたら、あなたはどうしますか?自身に置き換えて読んでみて下さい。
本で学べること!
- 自閉症者の犯罪を防ぐために親、支援者、周囲で「できること」
本でわかること!
どんな特性が加害行為に結びつくか?
自閉症の認知は「恨み」を抱いてしまうリスクが高く、それらが加害に結びつきやすいと著者は自身の被害体験から考察しています。
そして自閉症の認知を持っていると「恨み」を抱かないですむべきところで「恨み」を抱いてしまうリスクが高いと思います。不道徳なわけでも「心の闇」をかかえているわけでなくても。
自閉症者の犯罪を防ぐための提言 刑事告訴した立場から
そして、「大前提として発達障害のある人は法的トラブルを避けるのが一番いい」と本では結論付けています。犯罪を防ぐためにどうすればいいのか?も著者視点で書かれています。
犯罪を防ぐ方法
「他人も血肉の通った人間である」ことを知らなければいけない。そのためには「恨み」を持ちやすい認知特性があることを周囲が知り、育ててゆくことだと著者は語っています。
自分が血肉を持った運命の主体だと感じることが薄ければ、当然他人も平面的に見えます。
「見えないものは、ない」という認知特性を持っている自閉症スペクトラムの人たち。見えないものの最たるものといえば、他人の努力や苦労でしょう。
自閉症者の犯罪を防ぐための提言 刑事告訴した立場から
本には、犯罪予防のために参考となる本が紹介されています。ぜひ、ご確認下さい。
本を読んで思ったこと
本が出版された2012年。ASDのある青年の犯罪について行政、医療、福祉等、私は、いろんな立場の人に情報を求めて動いていました。そんな時に読んだのが「自閉症者の犯罪を防ぐための提言」です。
本では、福祉があまりにも非協力で無責任な状況で、被害者がいるという視点を忘れ誤った周囲の思考が結果的に自閉症の犯罪をエスカレートさせたように思えました。それは、私が情報を求めて動いてたASDの青年と同じで共感できました。
また、そもそも裁判とは?法廷とは?など、裁判に至るまでの経緯を丁寧に書き綴られていることで、障害者だけでなく健常者もピリッとした緊張感を覚えます。
法廷で不利な立場になってしまう発達障害のある人たちの現状が、本を読むと明確になりました。
- 裁判は社会性が必要な活動であること
- 弁護士を選ぶ、戦略を練る、流れを読む
- 自分の主張を法廷で受け入れられやすいかたちで伝える
「人の気持ち」や「暗黙の了解」が読みにくい発達障害者はこのプロセスにおいて決定的に不利な立場に立たされます。
自閉症者の犯罪を防ぐための提言 刑事告訴した立場から
補足
自閉症は障害であり個性ではない。一生付き合っていかなければいけないものである。それが事実だとしても、自閉症者もまた人間であり、努力の主体として自分の手で幸せをつかみ取っていける。
自閉症者の犯罪を防ぐための提言 刑事告訴した立場から
引用を読むと、障害こそあれ、同じ人間であることを力強く訴えています。どんな人も血肉の通った人間。
あともう一つ。大事な引用があります。
障害と事件との関連性を頭から否定する人たちには、違和感を感じています。打つべき手を打たない、打つ気がないように見えてしまうからです。
自閉症者の犯罪を防ぐための提言 刑事告訴した立場から
2000年以降に起きた事件をみていると、ここまで凶悪犯になれる自閉症スペクトラムのある人の認知や感覚が、なんらかの形で影響しているのではないか?と思えました。
彼(彼女)らの認知や感覚が多くの人に早く理解されるよう願います。
本をきっかけとして現状を知り、多様な立場で犯罪を防ぐ手立てを作ってゆければと思います。