知的障害のある人の数の概念について考えたことはありますか?簡単な足し算、引き算を間違えたり、習ったはずの掛け算九九を忘れていたり…。
この記事では凸凹な数の概念についてお伝えします。
知的障害のある人の数字にまつわるクエッション?
簡単な足し算、引き算を間違えるけど、電卓を扱える子っていますよね?また、3桁の足し算、引き算の答えは当たっているのに、「一週間は何日?」、「一ヶ月は何週間?」などに対する答えに詰まる子もいます。どうしてなんでしょう?
答えを丸暗記している?
答えを丸暗記している子がいます。
その子は掛け算九九は言えるのに、簡単な足し算引き算を間違えたりするのです。デジタル時計は読めるのにアナログ時計は読めないのです。でも、商品の値段を見ながら買い物はできます。
知的障害のある人の凸凹な数の概念は、謎です。
数の概念と知的障害のある状態
数の概念は抽象的
皆さん知ってましたか?「数を100まで数えられるようになったからといって、数の概念はよくわかっていないー引用」
私は数の概念が抽象的だったとは知りませんでした。でも、発達凸凹の子の謎に結びつけると腑に落ちます。
数の概念は抽象的なものなので、子どもに理解させるのは難しいものです。10や100まで数を数えられるようになっていても、実は数の概念はよくわかっていないケースも珍しくありません。
子どもへの数の教え方は?数の概念を理解させる6つの方法/oriori編集部
数の概念を理解している状態とは、数の集合体、数の順序を理解している状態のこと。
知的障害のある人の状態
そもそも、知的障害とはどのような状態のことをいうのでしょう?こちらは知的障害は治りますか?からの引用です。
知的障害とは認知発達に遅れがある状態とされます。では認知発達とは何でしょう?認知発達とは、「文字や言葉を使って生きる力」です。
文字や言葉を使って社会生活を構築してゆく。それが人間であり、人間社会です。人間が社会的動物であるがゆえに、知的障害があることで社会参加が難しくなったのだ、とも言えます(一部抜粋)
知的障害は治りますか?/著・愛甲修子P12
日常生活で育てよう!数の概念
「数の概念は抽象的」で、「知的障害は認知発達の遅れの状態」ということは、状態として見ている凸凹な困難さこそが、脳の特性だといえそうです。
筑波大学教授の熊谷恵子さんは、算数に困難のある子どもについて次のように語っています。
教科としての算数というのは「できるか」「できないか」で、できなければ「バツ」と評価されてしまいます。このことから、算数障害のお子さんはもちろん、算数に困難があるお子さんの多くは自尊感情が傷つきやすいのです。
そこで計算問題をくり返し解くようなドリル形式の学習をさせても課題は解決されません。算数がどんどんきらいになるだけです。
私が学習支援を行うときには、お子さんが楽しく興味を持って課題に取り組めるように工夫することを心がけています。
子どもの算数障害とは? 算数に困難のある子どものサポート法 ~筑波大学教授・熊谷恵子さん~
凸凹な困難さをどう上手く解決するか?
家庭で、「数を意識した体験を積むことで上手く解決できる」と熊谷恵子さんはいいます。記事から2つご紹介しますので、ぜひご家庭で参考下さい。
情動に結びついた経験が、数と量の感覚を育てる
「みかんを3個もらうより、5個もらうほうがうれしかった」「友だちは虫を5匹も捕ったのに、僕は2匹しか捕れなくて悔しかった」。
お子さんの発達の過程を考えるとき、このような自分の喜びや悲しみといった情動に結びついた経験が、数と量の感覚を育てるのに大切なことになります。
たとえば、お風呂で「お湯につかって30数えようね」ということも、とても大切な経験です。
このとき重要なのは、30まで正しく数えられるようにくり返し唱えることではなく、「10まで数えたときより、30まで数えたときのほうが身体がぽかぽかする」というように自分の気持ちと結びつけて体験できることです。
子どもの算数障害とは? 算数に困難のある子どものサポート法 ~筑波大学教授・熊谷恵子さん~
数量的課題を解く体験
「お肉を150g買ってきてね」と言われたときに、それがいくらでどれくらいの量なのか、持ち運んでいるときどのくらいの重さだったのか、そのように体感することがとても大切です。
いつも買い物に行くお店まで何メートルの距離があって、歩くと何分かかるのか、測ってみるのもいいですね。
自分の手足を動かして、日常生活のなかで与えられた数量的な課題を解く体験をたくさんさせてあげてください。
子どもの算数障害とは? 算数に困難のある子どものサポート法 ~筑波大学教授・熊谷恵子さん~
まとめ
数の概念がないと思われるような計算の間違いがあっても、お金を使って買い物が出来る子はいます。
また、電卓を使ってなら割り勘(割り算)を理解できる子はいますし、時間×時給の給与計算ができる子もいます。計りやカップを使ってなら、料理をすることが簡単な子もいますよね?
足し算、引き算、掛け算、割り算といった四則演算の凸凹な困難さは、脳の特性です。
筑波大学教授の熊谷恵子さんは、「算数に困難さがある子に、計算問題をくり返し解くようなドリル形式の学習をさせても課題は解決されない、家庭では数を意識した体験を!」と具体的な事例をインタビューで話しています。
間違いを指摘し、訓練させても課題は解決しないようです。
課題はお子さん、それぞれに違いますので、ぜひ目の前の困難さを確認し、家庭で数を意識した体験で育みましょう。